かみさま、
どうか彼を助けてください
彼の味方になってください
彼をあらゆる災いからお救いください
彼に幸せな時間を与えてください
わたしはもう
思い出の中でしか生きられないから
少年は、見知らぬ部屋で目を覚ました。
襟足まで伸びた金髪に、暗めの蒼い瞳。右側頭部に渦を巻いたような角がくっついていて、角の下から伸びている髪を三つ編みにしてある。
身の丈は10歳児くらいの子供の平均とほぼ同等。顔立ちもそれなりに幼いが、今は子供につきものの「あどけない」という言葉とはかけはなれた表情で、見知らぬベッドに横たわっていた。
木の匂いがする。
半開きになった目になにかいろいろ、不思議な光景が入ってくる気もするが、酷い疲労感で何も考える気になれなかった。
狭い部屋だ。天井はやや高く、間取りはほぼ真四角。自分が寝ているベッドと、窓際に小さな机と椅子。それと小さなタンスがあるだけ。
今の時点でこの部屋には寝ている自分以外には他の誰もいない。
手に力を込めてみる。痺れるような感覚と少しの痛み。自分の力がまだ完全に回復しているわけではないらしい。
空は夕暮れ。
王座の前で気絶した時は、まだ日は高かったはずだからそんなに時間は経っていないはずだが、それにしてもとても身体が重い。
(気絶する程、魔力を使い切れば…当たり前か)
そうやってしばらく物思いにふけっていると、部屋の外側から声が聞こえてきた。
「たっだいまー」
果てしなくひょうきんで間の抜けた声だった。
「おかえりロト」
「よぉおっさん、留守番ご苦労さん。おチビさんは?」
「さっき見たときは…まだ寝てた」
少し遠いが、何を言っているのかくらいはおおまかに聞き取れる。
(……)
まさかおチビさんというのは自分のことではないだろうなと思いながら、少年は微かに身構えた。本当は急いで飛び起きてさっさと逃げ出したいところだが、身体が重くて立ち上がれそうにない。
「なんだ、まだ寝てんのか。以外とねぼすけなんだなぁ」
声がだんだん近づいてくる。
ふたり分の足音が少年のいる部屋のすぐ外まできて、止まった。
まぁ、一応。と間抜けな声が一言前置きをして、
「入るぞー」
言いながらドアを開ける。
「お、もう起きてんじゃねえか。おはよう」
ドアを開けてまず、上体を起こした格好でとんでもない形相でこちらを睨みつけている少年にロトは満面の笑みであいさつした。うしろからトーマスが一緒に入って来る。
少年が何も言わず、そしてその場から動かないのをいいことに、ロトはなんの遠慮もなく真っ先にベッドの脇に腰掛けた。さりげなく椅子をすすめようとしたトーマスが、行き場をなくした椅子に静かに座った。ED対策
「気分はどうだ?一応看てはみたつもりだけど…どっか痛いとこあるか?」
その場で睨み続けていた少年にロトが手を伸ばす。
即座にぱしん、と手は払われて、代わりに最高に不機嫌な声が返ってきた。
「お前らの目的は何だ?先に言っとくが何があっても協力はしないぞ。」
目の前にいる間抜け面の男を、誘拐犯か何かだと思っているらしい。
手を払われた格好のままのロトがぽかんとしてから、面白そうに言う。
「なんだ、なかなか元気そうで安心した。俺はロト。こっちのでっかいのがトーマスだ。…お前は?」
少年はふたりを順番に見た。ロトと名乗った人間は、緑色の髪に片方の耳にリング状の大きな金のピアスをして、茶色いジャージに長さが大分違うブーツを履いていた。特徴がありすぎてまとまりがなく、何より怪しい。
反対に、トーマスと紹介された背の高い男は、暗い金髪を後ろでひとつに結び、肩幅と同じくらいに開いた足の上に両手の拳を片方ずつ軽く握って、穏やかな表情で行儀良く椅子に鎮座していた。額より少し上の前頭部には1本の長い角。城で一度会った竜だ。
まるで何かの面接に来ているような出で立ちだが、となりの間抜け面よりは幾分まともに見える。
少年はぷいと誘拐犯ふたり組(たぶん)から顔を背けた。
「……名乗る必要は無い」
「じゃあ勝手におチビさんて呼ぶってことで…」
「リュカだ」
ロトはますます楽しそうな表情をして目を輝かせている。
「そっか、リュカか!よろしくなリュカ!」
言いながらリュカの不意をつき、とても嬉しそうなロトがリュカの金髪をくしゃくしゃした。
「な、やめろ…っ、このっ」
すぐに振りほどかれるが、彼は満足そうに笑うと、軽い足取りで部屋から出て行こうとする。ドアノブに手をかけながら、
「まる1日ずっと寝てたんだ。腹減ったろ?なんか作ってやるからちょっと待ってろ。…カレーでいいよな?」
返事を聞かずに出て行った。
まる1日…?
ということは、気を失ってから随分時間が経ってるということだ。時間が経っているということは、その分自分のいた場所から離れてしまった可能性もある。
自分の立場に危機感を覚えつつ、くしゃくしゃされていた頭をおさえながらあっけにとられていたリュカが、ぎこちなく部屋に残ったトーマスに視線を移す。
「…すまないな、あいつはいつもあんな感じなんだ」
苦笑いしたくなる気持ちはなんとなくリュカにも分かる気がした。
…というか今「よろしく」って言ったか?
しかしそんなトーマスもすぐにはっと表情を変え、
「待てロト!やはり病み上がり(?)にはもう少し消化のいいものを…」
そんなことを言いながら部屋を出て行った。
少しした後。
3人はそれぞれ手に持った皿を微妙な顔で眺めている。
ロトとトーマスのふたりはキッチンで散々悩んだりもめたりした後、結局カレーのようなお粥のようなものを持って来た。むしろお粥にカレーをかけて持って来やがった。
確かにご飯の部分は消化にいいのかもしれない。
実際口にしてみると案外…なんて奇跡はもちろん起きず、見た目そのまんま、ただのべちゃべちゃになってしまったカレーライスだ。
「正直…悪かったと思っている」
「ごめん…俺も…」
ロトもトーマスも大きめのスプーンを持ったその手が、微妙な位置で止まっていた。こんもり盛られたべちゃべちゃカレーが虚しく湯気を立てている。
両者がどことなく青い顔をして、カレーにはなかなか口をつけられずに、相手に対して考えつく限りの言葉で謝りまくっていた。
「リュカも…ごめんな。こんなんで」
ロトが申し訳なさそうにカレーからリュカに視線を移した。
視線を受けたリュカが不思議そうにロトを見つめ返している。…………口の周りをカレーまみれにしながら。
ちなみに皿はきれいさっぱり空である。
「いや早っ、つかいつの間に!?」
「お、おかわりいるか…?」
お粥担当だったトーマスがおろおろと手を差し出すと、リュカは無言のまま両手で皿を差し出してきた。
目だけは相変わらず不機嫌そうが、その口元が説得力を皆無にしている。
すぐに皿を受け取ると、トーマスはいそいそと部屋を出て行った。口の端が笑っていた。
「あははははは、まあ味はともかく、はりきって作り過ぎちゃったし、沢山食ってくれよ」
包み隠さず大笑いしながらロトがハンカチを差し出す。
リュカは口の周りを拭き取りながら「ありがとう」と短く礼を言った。ハンカチに対しても、カレー(?)に対しても。
「さて、そろそろ今の状況について説明してやらなくちゃな」
3杯目のカレーを食べていたリュカの手が止まる。
眉間のシワはいつの間にか消えて、それでもまだしっかりとした警戒心を持って、ロトを見つめた。
ロトもまた、しっかりと小さな少年を見据える。大きく、透き通ったガラスよりも綺麗な瞳の中の自分を見ていた。
「目が覚める少し前のことは覚えてるな?」
順を追って、ゆっくりロトが説明を始める。
少年は街の人間たちの間で「宝」と呼ばれている1本のペンを彼らから盗み出した。
大勢の人間の前で、それを破壊しようとしたが失敗し、そのまま気を失ってしまった。
リュカは頭の中でその時の出来事をはっきり思い浮かべながら、ロトの言葉に頷いて肯定してみせる。
「気を失った直後、お前は俺たちによってここまで連れて来られた。つか。ほぼ俺の独断で攫って来ちゃったんだけど」
あは、なんて言いながら可愛く笑ってみせても少年の警戒心が解けるはずもない。
「で、今お前がいる場所。ここは、英雄たちの集う街『アレクサンドリア』。いろんな世界からいろんな奴らが、いろんな冒険を経てここに来てる。ちょっと説明が難しいんだけど…お前もその中のひとりで、…もう元の生活には戻れないと思ってくれ。ここからじゃ帰れないんだ」
「…ずいぶん大げさな言い方だな。意地でもここから逃げ出して、歩いてだって帰ろうと思えば帰れるだろう」
ロトは悩みながらゆっくりと答える。
「そうじゃなくて…普通の手段じゃ不可能なんだ。俺もあんまり説明が上手い方じゃないんだけど…」
パラレルワールドって言ったら分かるかな。俺たちが今いる世界とは別の異次元の世界。
おとぎ話みたいなのでよくあるよな。
それぞれの世界は普通、お互いに干渉することはできないんだけど、ここの世界の奴らはある方法を使ってここから別の世界へ冒険しに行くことができるんだ。…というか、冒険しに行くことを仕事にしてるんだよな。
それが、俺たち『冒険者』だ。
「人攫いじゃないのか」
「まぁ…お前にとっちゃそうなんだろうな。でも冒険といっても、行った先の世界でやることって結構いろいろあるんだ。探し物だったり、物資を届けるだけだったり、特定の魔物の討伐だったり…」
言いながらロトは苦笑する。しかし、自分の説明にリュカがちゃんとついて来れていることに内心感心もしていた。この小さな少年は見た目よりもずっと賢いのかも知れない。
『冒険者』はお互い気の合う仲間とつるんでパーティを組んだりするんだ。このでっかいトーマスのおっさんは、俺のパーティの仲間さ。他にもいるんだけど…まぁ、おいおい紹介するよ。
そいつらも俺がこうやって連れて来たり…俺より先にこの世界に来てたり。まあ、ここについてはないものはないってくらいいろいろあるから。ゆっくり馴染んでいけばいいかな。
そうそ、一番最初にお前に説明しなきゃいけないことがあったんだった。パーティを組んだ冒険者たちは、いろんな世界でいろんなことするけど…その全体で言う…最終的な目的はみんな一緒なんだ。
「これなんだけど」
そう言ってロトがポケットから取り出したのは、はじめにリュカが持っていたあのペンだった。
それは相変わらず羽の部分がくたびれていて、錆びたようなペン先から浸してもいないインクがしたたりそうになっている。
少年の中で先程までの状況が一気に蘇り、全身の毛が逆立つような感覚がした。
「返せ!!!」
半ば襲いかかるような勢いでリュカがロトに飛びかかろうとした。が、とっさにロトは半歩下がり、更にリュカはトーマスの巨体に押さえつけられた。対格差で、ほとんど下敷きになっているように見える。
「そう慌てるな。これを使おうって話じゃないんだ。俺たちの目的を説明するついでに、一緒にこれを葬っておこうと思って…」
「…壊せるのか…?」
下敷きのままリュカが訪ねる。
ロトはしっかり頷いてから答えた。
「世界中の『これ』を葬り去るのが、『冒険者』の仕事なんだ」
翌日。
2人はリュカを連れてある場所に向かっていた。
柔らかい日差しが照らす石畳は、よく舗装されていてとても歩きやすい。
全体的に暖色系をした街並みで、褐色をしたレンガ造りの家が多い。人もまばらでどこか落ち着いた雰囲気だ。
ロトの家がある場所から大きな通りに移動すると、一気に人気が多くなる。
わりとにぎやかな店が建ち並び、食品や衣類、武器、防具、それからよくわからない怪しい煙なんかが立ち上る変な店、とにかくいろいろなものが軒並み「買わないか」と自己主張していた。
行き交う人の姿もさまざまで、子連れの親子がいたと思えば、ごつい鎧を身にまとった屈強そうな男も歩いている。小さな子供が店頭にならぶ武器を楽しそうに振り回そうとしているあたり、平和なのかそうじゃないのかが若干掴みにくいところだ。
3人は今のところそれらをすべて無視して大通りを少しゆっくり歩いていた。
リュカに合わせているつもりらしい。
ロトとトーマスがリュカを連れて来た場所は、街のほぼ中心部にある、白いドーム型の建物だった。
一回り大きな円を描くように低めの柵が設けられ、その内側に広がる芝生には小さな花が咲いている。宗教的な観念からか白い壁には荘厳な装飾が施されていた。
とてつもなく広い半球型のその建物には、八方からの入り口があり、それぞれの入り口に数人の見張りがついている。ある入り口の見張りのうちの1人がロトたちに気付いて話しかけて来た。
「よぉロトじゃねえか」
ロトも片手をあげながら「よー」と短くあいさつする。そのすぐ後ろには彼の頭1つ大きなトーマス。…ではなく、ロトの胸の高さくらいまでの身長のリュカだ。白いドーム型の建物を物珍しそうに眺めている。
「新顔か?」
大きな見張りの男がリュカを指差して訪ねる。
「ああ、リュカってんだ。よろしくしてやってくれ」
「トーマスといい、ルルの姉さんといい、お前んとこは相変わらず面白い奴が多いな。坊主も、よろしくな」
景気良く笑う男は、大きな手でリュカの頭をぐしゃぐしゃした。
が、またすぐに払われてしまう。ぱしん、と小さく音を立てて、その場の空気が少し冷めた。
「下衆な人間が…」
前に一度、トーマスにも理解できなかった、誰にも分からない言葉で、リュカが小さく悪態をつく。
その場にいた何人かは一瞬ぽかんとしたが、すぐまた機嫌を直しがははと笑っていた。こりゃ、手なずけるのも難儀だな、などと冗談を言いながら、ロトたちを中へ通す。
「とと…、その前に…『ロト・トラヴァス。種の還元に来ました』」
見張りの男にそう言って差し出したのは、リュカの持っていたペンと、自分の耳から取り外した小さなイヤホンだった。
「はいよ、確かに。ようこそ、ここは『大樹の根』。あなたに記憶の導きがあらんことを」
大樹の根。
建物の中で目にしたものは、確かに大樹だった。
半球を内側から見た白い天井を根が覆い尽くし、中心の一番高い場所からとてつもなく太い幹が、床に向かってまっすぐ伸びている。
逆さの大樹が、3人の眼前に広がっていた。
SUPER FAT BURNING不思議な光景だった。何十人が手を繋いでもなかなか一周できないだろう幹から伸びる無数の枝は大きく葉を広げている。
ロトは垂れ下がっている太い枝の下まで歩いて行った。
大樹の根の前に呆然と立ち尽くしているリュカを、自分の側まで呼ぶ。リュカの後ろからトーマスも付いて来る。
「ほら、これ」
ロトは手に持っていたペンを、自分の隣に来たリュカに渡した。
ずっと上を見たままぽかんとしたリュカが自分の掌に乗っているそれを見てぎょっとする。
「おまっ、これがなんなのか分かっているのか!?簡単に他人の手にだな…」
「だってお前、すごい必死そうだったし。やっぱ自分で壊したいだろ?」
ほら、と言いながらロトが一枚の葉の近くに手の中のものをかざす仕草をする。
わけが分からないといった顔をしながら、リュカが目の前にあった1枚の葉にペンを差し出した。
すると、まるで生き物か何かのように葉がペンの方に寄って来る。周りの葉とさわさわ擦り合わさりながらペンに覆いかぶさるような形で、リュカの手を包み込んでいた。他の葉も、風もないのに微かに揺れている。
「わ、わ…」
「大丈夫だから、そのまま」
びっくりして後ずさろうとするリュカを、トーマスがそっと後ろから支えた。
手を包む葉は少しだけペンに触れると、葉脈の部分がぼんやり光り始める。葉に共鳴するかのように、手の中のペンもぼんやり光り出す。ペンから何か伝わって、それが葉に吸収されて行くように光が伝わって行く様子が、リュカの目に映っていた。
しばらくして、手を包んでいた葉がゆっくりと元の位置に戻り出すと、同時に手の中のペンがぼろぼろと崩れ出した。灰になっていく。
ことが完全に終わっても、リュカはしばらくその場から動けずにいた。
まだ手に違和感があるような気がする。あれだけ力を込めて壊そうとしたものが目の前で崩れ去っていったことが信じられずにいる。正直、恐怖に似たような感情のため、手が震えている。
「あれは、…何だったんだ?僕の目の前で、何が起きていたんだ?」
リュカがやっとその言葉を絞り出すまで待っていたロトが、ゆったりと説明をする。
「あれは、種なんだ。世界が生まれるための種」
ひとつの世界は、例えるならば心臓のようなものだ。
心臓は鼓動をする。鼓動をすると、血液が巡る。
世界の場合はこの血液の代わりにありとあらゆる生命の記憶が、循環を繰り返す。
人ひとりの『記憶』は、生命としての寿命が訪れると、まず『からだ』という器から離れ、『心臓』のエネルギーとして吸収される。吸収されたエネルギーはまた新たな生命を生み出す力になる。生み出された生命はまた寿命が訪れるまで『記憶』を蓄える。
これが世界の鼓動だ。
しかし、世界にもまた寿命がある。
寿命を迎えた世界は今まで蓄えていた世界自身の記憶を新しい世界を作るために一気に凝縮する。
世界が朽ち果て、やがて消えるその時、そこにはいくつかの『世界の元になるもの』が残る。
これが通称『種』だ。
いくつかの種からはいくつかの世界が生まれ、そうやって世界は増えていく。
「リュカが持っていたのは、その『種』。つまり、世界の記憶が凝縮された、エネルギーの塊のようなものだったんだ。正確には、その「一部」って感じなんだろうけど、何年…何千、何万年分のエネルギーなのか、分かったもんじゃない。そう簡単には壊せないのさ」
小さな少年は思わずため息をついた。
目の前にいる男はどこまでも怪しくて、リュカにとって信用なんて言葉からはかけ離れたような奴だ。
しかしもし仮に、この話が本当だとしたら。自分はなんて話に巻き込まれてしまったんだろうと、改めて複雑な気持ちになる。
「ちなみに今、リュカがこの大樹の根に施したことは、種の還元。つまり、これから生まれるために力を発揮するはずだった種を元の役割ができる場所に帰した行為なんだ。まぁ、そこらへんはまたおいおい説明してくさ。ともかくこれでペンは完全に消滅した」
リュカはまた無言でロトを見つめていた。
なんにせよ、これで自分のしたかったことはすべてが終わってしまったわけだ。
手元に、もうあの「宝」はない。跡形も無くなってしまった以上、もうあのペンを誰かに使われることもないし、…自分が体験した惨劇が繰り返されることもない。
また、自分がそれを使える機会も失った。
(これで…良かったんだよね)
リュカは手に残っていたわずかな灰を、軽く払う。
その様子を、ロトとトーマスも無言で見つめていた。
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