2010年12月21日

世界にもまた寿命がある



かみさま、
どうか彼を助けてください

彼の味方になってください
彼をあらゆる災いからお救いください
彼に幸せな時間を与えてください

わたしはもう
思い出の中でしか生きられないから








少年は、見知らぬ部屋で目を覚ました。
襟足まで伸びた金髪に、暗めの蒼い瞳。右側頭部に渦を巻いたような角がくっついていて、角の下から伸びている髪を三つ編みにしてある。
身の丈は10歳児くらいの子供の平均とほぼ同等。顔立ちもそれなりに幼いが、今は子供につきものの「あどけない」という言葉とはかけはなれた表情で、見知らぬベッドに横たわっていた。

木の匂いがする。
半開きになった目になにかいろいろ、不思議な光景が入ってくる気もするが、酷い疲労感で何も考える気になれなかった。
狭い部屋だ。天井はやや高く、間取りはほぼ真四角。自分が寝ているベッドと、窓際に小さな机と椅子。それと小さなタンスがあるだけ。
今の時点でこの部屋には寝ている自分以外には他の誰もいない。
手に力を込めてみる。痺れるような感覚と少しの痛み。自分の力がまだ完全に回復しているわけではないらしい。
空は夕暮れ。
王座の前で気絶した時は、まだ日は高かったはずだからそんなに時間は経っていないはずだが、それにしてもとても身体が重い。
(気絶する程、魔力を使い切れば…当たり前か)

そうやってしばらく物思いにふけっていると、部屋の外側から声が聞こえてきた。
「たっだいまー」
果てしなくひょうきんで間の抜けた声だった。
「おかえりロト」
「よぉおっさん、留守番ご苦労さん。おチビさんは?」
「さっき見たときは…まだ寝てた」
少し遠いが、何を言っているのかくらいはおおまかに聞き取れる。
(……)
まさかおチビさんというのは自分のことではないだろうなと思いながら、少年は微かに身構えた。本当は急いで飛び起きてさっさと逃げ出したいところだが、身体が重くて立ち上がれそうにない。
「なんだ、まだ寝てんのか。以外とねぼすけなんだなぁ」
声がだんだん近づいてくる。
ふたり分の足音が少年のいる部屋のすぐ外まできて、止まった。
まぁ、一応。と間抜けな声が一言前置きをして、
「入るぞー」
言いながらドアを開ける。

「お、もう起きてんじゃねえか。おはよう」
ドアを開けてまず、上体を起こした格好でとんでもない形相でこちらを睨みつけている少年にロトは満面の笑みであいさつした。うしろからトーマスが一緒に入って来る。
少年が何も言わず、そしてその場から動かないのをいいことに、ロトはなんの遠慮もなく真っ先にベッドの脇に腰掛けた。さりげなく椅子をすすめようとしたトーマスが、行き場をなくした椅子に静かに座った。ED対策
「気分はどうだ?一応看てはみたつもりだけど…どっか痛いとこあるか?」
その場で睨み続けていた少年にロトが手を伸ばす。
即座にぱしん、と手は払われて、代わりに最高に不機嫌な声が返ってきた。
「お前らの目的は何だ?先に言っとくが何があっても協力はしないぞ。」
目の前にいる間抜け面の男を、誘拐犯か何かだと思っているらしい。
手を払われた格好のままのロトがぽかんとしてから、面白そうに言う。
「なんだ、なかなか元気そうで安心した。俺はロト。こっちのでっかいのがトーマスだ。…お前は?」
少年はふたりを順番に見た。ロトと名乗った人間は、緑色の髪に片方の耳にリング状の大きな金のピアスをして、茶色いジャージに長さが大分違うブーツを履いていた。特徴がありすぎてまとまりがなく、何より怪しい。
反対に、トーマスと紹介された背の高い男は、暗い金髪を後ろでひとつに結び、肩幅と同じくらいに開いた足の上に両手の拳を片方ずつ軽く握って、穏やかな表情で行儀良く椅子に鎮座していた。額より少し上の前頭部には1本の長い角。城で一度会った竜だ。
まるで何かの面接に来ているような出で立ちだが、となりの間抜け面よりは幾分まともに見える。
少年はぷいと誘拐犯ふたり組(たぶん)から顔を背けた。
「……名乗る必要は無い」
「じゃあ勝手におチビさんて呼ぶってことで…」
「リュカだ」
ロトはますます楽しそうな表情をして目を輝かせている。
「そっか、リュカか!よろしくなリュカ!」
言いながらリュカの不意をつき、とても嬉しそうなロトがリュカの金髪をくしゃくしゃした。
「な、やめろ…っ、このっ」
すぐに振りほどかれるが、彼は満足そうに笑うと、軽い足取りで部屋から出て行こうとする。ドアノブに手をかけながら、
「まる1日ずっと寝てたんだ。腹減ったろ?なんか作ってやるからちょっと待ってろ。…カレーでいいよな?」
返事を聞かずに出て行った。
まる1日…?
ということは、気を失ってから随分時間が経ってるということだ。時間が経っているということは、その分自分のいた場所から離れてしまった可能性もある。
自分の立場に危機感を覚えつつ、くしゃくしゃされていた頭をおさえながらあっけにとられていたリュカが、ぎこちなく部屋に残ったトーマスに視線を移す。
「…すまないな、あいつはいつもあんな感じなんだ」
苦笑いしたくなる気持ちはなんとなくリュカにも分かる気がした。
…というか今「よろしく」って言ったか?
しかしそんなトーマスもすぐにはっと表情を変え、
「待てロト!やはり病み上がり(?)にはもう少し消化のいいものを…」
そんなことを言いながら部屋を出て行った。



少しした後。
3人はそれぞれ手に持った皿を微妙な顔で眺めている。
ロトとトーマスのふたりはキッチンで散々悩んだりもめたりした後、結局カレーのようなお粥のようなものを持って来た。むしろお粥にカレーをかけて持って来やがった。
確かにご飯の部分は消化にいいのかもしれない。
実際口にしてみると案外…なんて奇跡はもちろん起きず、見た目そのまんま、ただのべちゃべちゃになってしまったカレーライスだ。
「正直…悪かったと思っている」
「ごめん…俺も…」
ロトもトーマスも大きめのスプーンを持ったその手が、微妙な位置で止まっていた。こんもり盛られたべちゃべちゃカレーが虚しく湯気を立てている。
両者がどことなく青い顔をして、カレーにはなかなか口をつけられずに、相手に対して考えつく限りの言葉で謝りまくっていた。
「リュカも…ごめんな。こんなんで」
ロトが申し訳なさそうにカレーからリュカに視線を移した。
視線を受けたリュカが不思議そうにロトを見つめ返している。…………口の周りをカレーまみれにしながら。
ちなみに皿はきれいさっぱり空である。
「いや早っ、つかいつの間に!?」
「お、おかわりいるか…?」
お粥担当だったトーマスがおろおろと手を差し出すと、リュカは無言のまま両手で皿を差し出してきた。
目だけは相変わらず不機嫌そうが、その口元が説得力を皆無にしている。
すぐに皿を受け取ると、トーマスはいそいそと部屋を出て行った。口の端が笑っていた。
「あははははは、まあ味はともかく、はりきって作り過ぎちゃったし、沢山食ってくれよ」
包み隠さず大笑いしながらロトがハンカチを差し出す。
リュカは口の周りを拭き取りながら「ありがとう」と短く礼を言った。ハンカチに対しても、カレー(?)に対しても。

「さて、そろそろ今の状況について説明してやらなくちゃな」
3杯目のカレーを食べていたリュカの手が止まる。
眉間のシワはいつの間にか消えて、それでもまだしっかりとした警戒心を持って、ロトを見つめた。
ロトもまた、しっかりと小さな少年を見据える。大きく、透き通ったガラスよりも綺麗な瞳の中の自分を見ていた。
「目が覚める少し前のことは覚えてるな?」
順を追って、ゆっくりロトが説明を始める。
少年は街の人間たちの間で「宝」と呼ばれている1本のペンを彼らから盗み出した。
大勢の人間の前で、それを破壊しようとしたが失敗し、そのまま気を失ってしまった。
リュカは頭の中でその時の出来事をはっきり思い浮かべながら、ロトの言葉に頷いて肯定してみせる。
「気を失った直後、お前は俺たちによってここまで連れて来られた。つか。ほぼ俺の独断で攫って来ちゃったんだけど」
あは、なんて言いながら可愛く笑ってみせても少年の警戒心が解けるはずもない。
「で、今お前がいる場所。ここは、英雄たちの集う街『アレクサンドリア』。いろんな世界からいろんな奴らが、いろんな冒険を経てここに来てる。ちょっと説明が難しいんだけど…お前もその中のひとりで、…もう元の生活には戻れないと思ってくれ。ここからじゃ帰れないんだ」
「…ずいぶん大げさな言い方だな。意地でもここから逃げ出して、歩いてだって帰ろうと思えば帰れるだろう」
ロトは悩みながらゆっくりと答える。
「そうじゃなくて…普通の手段じゃ不可能なんだ。俺もあんまり説明が上手い方じゃないんだけど…」


パラレルワールドって言ったら分かるかな。俺たちが今いる世界とは別の異次元の世界。
おとぎ話みたいなのでよくあるよな。
それぞれの世界は普通、お互いに干渉することはできないんだけど、ここの世界の奴らはある方法を使ってここから別の世界へ冒険しに行くことができるんだ。…というか、冒険しに行くことを仕事にしてるんだよな。
それが、俺たち『冒険者』だ。

「人攫いじゃないのか」
「まぁ…お前にとっちゃそうなんだろうな。でも冒険といっても、行った先の世界でやることって結構いろいろあるんだ。探し物だったり、物資を届けるだけだったり、特定の魔物の討伐だったり…」
言いながらロトは苦笑する。しかし、自分の説明にリュカがちゃんとついて来れていることに内心感心もしていた。この小さな少年は見た目よりもずっと賢いのかも知れない。

『冒険者』はお互い気の合う仲間とつるんでパーティを組んだりするんだ。このでっかいトーマスのおっさんは、俺のパーティの仲間さ。他にもいるんだけど…まぁ、おいおい紹介するよ。
そいつらも俺がこうやって連れて来たり…俺より先にこの世界に来てたり。まあ、ここについてはないものはないってくらいいろいろあるから。ゆっくり馴染んでいけばいいかな。
そうそ、一番最初にお前に説明しなきゃいけないことがあったんだった。パーティを組んだ冒険者たちは、いろんな世界でいろんなことするけど…その全体で言う…最終的な目的はみんな一緒なんだ。

「これなんだけど」
そう言ってロトがポケットから取り出したのは、はじめにリュカが持っていたあのペンだった。
それは相変わらず羽の部分がくたびれていて、錆びたようなペン先から浸してもいないインクがしたたりそうになっている。
少年の中で先程までの状況が一気に蘇り、全身の毛が逆立つような感覚がした。
「返せ!!!」
半ば襲いかかるような勢いでリュカがロトに飛びかかろうとした。が、とっさにロトは半歩下がり、更にリュカはトーマスの巨体に押さえつけられた。対格差で、ほとんど下敷きになっているように見える。
「そう慌てるな。これを使おうって話じゃないんだ。俺たちの目的を説明するついでに、一緒にこれを葬っておこうと思って…」
「…壊せるのか…?」
下敷きのままリュカが訪ねる。
ロトはしっかり頷いてから答えた。
「世界中の『これ』を葬り去るのが、『冒険者』の仕事なんだ」


翌日。
2人はリュカを連れてある場所に向かっていた。

柔らかい日差しが照らす石畳は、よく舗装されていてとても歩きやすい。
全体的に暖色系をした街並みで、褐色をしたレンガ造りの家が多い。人もまばらでどこか落ち着いた雰囲気だ。
ロトの家がある場所から大きな通りに移動すると、一気に人気が多くなる。
わりとにぎやかな店が建ち並び、食品や衣類、武器、防具、それからよくわからない怪しい煙なんかが立ち上る変な店、とにかくいろいろなものが軒並み「買わないか」と自己主張していた。
行き交う人の姿もさまざまで、子連れの親子がいたと思えば、ごつい鎧を身にまとった屈強そうな男も歩いている。小さな子供が店頭にならぶ武器を楽しそうに振り回そうとしているあたり、平和なのかそうじゃないのかが若干掴みにくいところだ。
3人は今のところそれらをすべて無視して大通りを少しゆっくり歩いていた。
リュカに合わせているつもりらしい。

ロトとトーマスがリュカを連れて来た場所は、街のほぼ中心部にある、白いドーム型の建物だった。
一回り大きな円を描くように低めの柵が設けられ、その内側に広がる芝生には小さな花が咲いている。宗教的な観念からか白い壁には荘厳な装飾が施されていた。
とてつもなく広い半球型のその建物には、八方からの入り口があり、それぞれの入り口に数人の見張りがついている。ある入り口の見張りのうちの1人がロトたちに気付いて話しかけて来た。
「よぉロトじゃねえか」
ロトも片手をあげながら「よー」と短くあいさつする。そのすぐ後ろには彼の頭1つ大きなトーマス。…ではなく、ロトの胸の高さくらいまでの身長のリュカだ。白いドーム型の建物を物珍しそうに眺めている。
「新顔か?」
大きな見張りの男がリュカを指差して訪ねる。
「ああ、リュカってんだ。よろしくしてやってくれ」
「トーマスといい、ルルの姉さんといい、お前んとこは相変わらず面白い奴が多いな。坊主も、よろしくな」
景気良く笑う男は、大きな手でリュカの頭をぐしゃぐしゃした。
が、またすぐに払われてしまう。ぱしん、と小さく音を立てて、その場の空気が少し冷めた。
「下衆な人間が…」
前に一度、トーマスにも理解できなかった、誰にも分からない言葉で、リュカが小さく悪態をつく。
その場にいた何人かは一瞬ぽかんとしたが、すぐまた機嫌を直しがははと笑っていた。こりゃ、手なずけるのも難儀だな、などと冗談を言いながら、ロトたちを中へ通す。
「とと…、その前に…『ロト・トラヴァス。種の還元に来ました』」
見張りの男にそう言って差し出したのは、リュカの持っていたペンと、自分の耳から取り外した小さなイヤホンだった。
「はいよ、確かに。ようこそ、ここは『大樹の根』。あなたに記憶の導きがあらんことを」

大樹の根。
建物の中で目にしたものは、確かに大樹だった。
半球を内側から見た白い天井を根が覆い尽くし、中心の一番高い場所からとてつもなく太い幹が、床に向かってまっすぐ伸びている。
逆さの大樹が、3人の眼前に広がっていた。
SUPER FAT BURNING不思議な光景だった。何十人が手を繋いでもなかなか一周できないだろう幹から伸びる無数の枝は大きく葉を広げている。
ロトは垂れ下がっている太い枝の下まで歩いて行った。
大樹の根の前に呆然と立ち尽くしているリュカを、自分の側まで呼ぶ。リュカの後ろからトーマスも付いて来る。
「ほら、これ」
ロトは手に持っていたペンを、自分の隣に来たリュカに渡した。
ずっと上を見たままぽかんとしたリュカが自分の掌に乗っているそれを見てぎょっとする。
「おまっ、これがなんなのか分かっているのか!?簡単に他人の手にだな…」
「だってお前、すごい必死そうだったし。やっぱ自分で壊したいだろ?」
ほら、と言いながらロトが一枚の葉の近くに手の中のものをかざす仕草をする。
わけが分からないといった顔をしながら、リュカが目の前にあった1枚の葉にペンを差し出した。
すると、まるで生き物か何かのように葉がペンの方に寄って来る。周りの葉とさわさわ擦り合わさりながらペンに覆いかぶさるような形で、リュカの手を包み込んでいた。他の葉も、風もないのに微かに揺れている。
「わ、わ…」
「大丈夫だから、そのまま」
びっくりして後ずさろうとするリュカを、トーマスがそっと後ろから支えた。
手を包む葉は少しだけペンに触れると、葉脈の部分がぼんやり光り始める。葉に共鳴するかのように、手の中のペンもぼんやり光り出す。ペンから何か伝わって、それが葉に吸収されて行くように光が伝わって行く様子が、リュカの目に映っていた。
しばらくして、手を包んでいた葉がゆっくりと元の位置に戻り出すと、同時に手の中のペンがぼろぼろと崩れ出した。灰になっていく。

ことが完全に終わっても、リュカはしばらくその場から動けずにいた。
まだ手に違和感があるような気がする。あれだけ力を込めて壊そうとしたものが目の前で崩れ去っていったことが信じられずにいる。正直、恐怖に似たような感情のため、手が震えている。
「あれは、…何だったんだ?僕の目の前で、何が起きていたんだ?」
リュカがやっとその言葉を絞り出すまで待っていたロトが、ゆったりと説明をする。
「あれは、種なんだ。世界が生まれるための種」



ひとつの世界は、例えるならば心臓のようなものだ。
心臓は鼓動をする。鼓動をすると、血液が巡る。
世界の場合はこの血液の代わりにありとあらゆる生命の記憶が、循環を繰り返す。
人ひとりの『記憶』は、生命としての寿命が訪れると、まず『からだ』という器から離れ、『心臓』のエネルギーとして吸収される。吸収されたエネルギーはまた新たな生命を生み出す力になる。生み出された生命はまた寿命が訪れるまで『記憶』を蓄える。
これが世界の鼓動だ。

しかし、世界にもまた寿命がある。
寿命を迎えた世界は今まで蓄えていた世界自身の記憶を新しい世界を作るために一気に凝縮する。
世界が朽ち果て、やがて消えるその時、そこにはいくつかの『世界の元になるもの』が残る。
これが通称『種』だ。
いくつかの種からはいくつかの世界が生まれ、そうやって世界は増えていく。




「リュカが持っていたのは、その『種』。つまり、世界の記憶が凝縮された、エネルギーの塊のようなものだったんだ。正確には、その「一部」って感じなんだろうけど、何年…何千、何万年分のエネルギーなのか、分かったもんじゃない。そう簡単には壊せないのさ」
小さな少年は思わずため息をついた。
目の前にいる男はどこまでも怪しくて、リュカにとって信用なんて言葉からはかけ離れたような奴だ。
しかしもし仮に、この話が本当だとしたら。自分はなんて話に巻き込まれてしまったんだろうと、改めて複雑な気持ちになる。
「ちなみに今、リュカがこの大樹の根に施したことは、種の還元。つまり、これから生まれるために力を発揮するはずだった種を元の役割ができる場所に帰した行為なんだ。まぁ、そこらへんはまたおいおい説明してくさ。ともかくこれでペンは完全に消滅した」

リュカはまた無言でロトを見つめていた。
なんにせよ、これで自分のしたかったことはすべてが終わってしまったわけだ。
手元に、もうあの「宝」はない。跡形も無くなってしまった以上、もうあのペンを誰かに使われることもないし、…自分が体験した惨劇が繰り返されることもない。

また、自分がそれを使える機会も失った。

(これで…良かったんだよね)
リュカは手に残っていたわずかな灰を、軽く払う。
その様子を、ロトとトーマスも無言で見つめていた。

posted by 朋子 at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月08日

AW11の心臓

『抜いちまった。雪ちゃんがランエボを……』

トランシーバーの向こうの忠秀は、間抜けな声で答えた。

「雪が抜いたの!?」

「……抜いたって、ここは峠だよ」

美羽も聖も忠秀の報告に唖然となって顔を見合わせた。

「忠秀!ここは天下の公道よ!!抜くなんてバカなこといわないで。ましてや、雪は免許とったばっかなのよ」

『オ、オレにも目の前で起きたことが信じられねぇんだ……。AWが鮮やかにイン側から抜いたんだ』


「……イン側。いろははそんなに広くない」

「そうよ。どうやってインから抜くのよ!?」『ダートだ……。AWは、イン側のフロントタイヤをダートに突っ込ませて砂煙上げながら曲がっていったんだ』


「そんな攻め方してたらアンダーで曲がれないんじゃ……」

「……ミッドシップだから?」

『可能性は無くはないな。ミッドシップは、フロントが軽いが故にアンダーを出しやすい。だが、下りの低速コーナーとなれば別だ。下りは、嫌でもフロントタイヤに荷重がかかるからな』

SUPER FAT BURNING「……でも、やろうと思って出来ることじゃない。ここを走り慣れてない限り」

「それって、雪がここの常連ってこと?」『いや、流石にそれはないだろ。だが、あのAW。何かがおかしい……。』

いろは坂で友人たちの考えが渦巻く中、雪が運転するAWは、いろは坂を上っていた。

「ヤッパリ、MR(ミッドシップ)で上りを攻めるのは厳しいでしょ」

助手席に座っている坂本は、優しく微笑みかけるように雪に話しかける。

「ちょっとでも、油断するとクルマが曲がらないんですよね」

先ほどから、どうもクルマが曲がらない。

「上りじゃ、フロントタイヤにしっかり荷重がかからないからアンダーになるのよね」

「アンダー?」

「そう、アンダー。正確にはアンダーステアって言うの。コーナーでアウト側に走行ラインが膨らむことを指すの。ちなみにイン側に巻き込まれるのをオーバーステアって言うわ」

「なる程。難しいですね」

必死になってステアを切り込むが、クルマは思ったように曲がらない。

「それじゃ、一つアドバイス。コーナー手前でブレーキをしっかり踏んであげてフロントタイヤに荷重をかけてみて。私が合図するから言うとおりにしてみて。それじゃ、次のコーナーでやってみようか」

コーナーを抜け、アクセルを踏み込む。

直ぐに左に曲がるコーナーが見えてきた。

「そろそろ、ここでブレーキ!」

えっ!?

こんな手前でブレーキを踏むの?

そう思ったが、雪は右足でブレーキペダルをリリースする。

慣性の法則でグッと体が前に持って行かれる。

「そのまま、ここでブレーキをはなして、ステアを切り込む」言われたとおりに、ブレーキペダルから足をはなし、ステアを左に切り込む。

雪は驚いた!


それもそのはず、先ほどまで全然接地感がなかったフロントタイヤがしっかりと地面に食いついている感覚が握っているステアから感じ取ることができたのだ。

ステアをそれほど切り込んでいないのにAWは、コーナーにそって曲がっていく。

フロントタイヤがグリップしたまま、コーナーの出口が見えてくる。

横Gがだんだんとおさまってきたとき。

「ココからアクセルを踏み込む。」

アクセルペダルに乗せていた右足を踏み込む。

タコメーター下についているSUPER CHARGER(スーパーチャジャー)のランプが点灯して、タコメーターの針が一気に跳ね上がっていく。

AWは弾丸のように加速していく。

速い!

雪は、自分の運転では感じたことない加速感に少し戸惑いながら。

AWというマシンを通して自分の五感に訴えかけてくるモノを吸収する。
このとき、雪にはAWがこう言っているように感じた。

早漏防止『キミに、乗りこなせるかな?』


耳を通してというか、頭に直接響いたような声だった。

坂本は、そんな雪をみて、クスッと笑った。

マシンとの対話モードに入ったのか。

雪ちゃん。

このAW11はアナタを知らない間にもっと上のレベルに連れて行ってくれるわ。

だって、このコは意志を持ったクルマなんなんだから……。


AW11の心臓。
4A−GZEは、力強い咆哮をあげる。

マフラーから、真っ赤な炎を吐きだしてAWはいろは坂を駆け上がったのだった。


posted by 朋子 at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月07日

愛の告白と謝罪の言葉

昼1時29分。
 太陽が下り始めるこの時間に、僕小鳥遊(たかなし)宇宙(たかひろ)は、全力疾走で学校へ向かっていた。
 4月6日(火)、今日は高校の入学式だ。もう一度頭の中で入学式についての内容を思い出してみる。

『日時
  4月6日火曜日 14:00〜
    ※13:30には各自教室で待機していること。』

 つまり、遅刻寸前なのである。しかも、高1の入学式に。
 教室については先日の健康診断のときに知らされている。ちなみに僕は11HR(ホームルーム)。つまり、1年1組だ。
 そして、僕の高校生活での目標、それは、彼女を作りリア充になること、である。
 そんなことを考えているうちに、もう校門だ。
 そのままスピードを落とさずに門の角を曲がったとき、

 ドン

 何か、否、誰かにぶつかった。
 このシチュエーションでぶつかる相手といえば美少女で、そのまま愛の告白をされ、幸せな学校生活を送れるものだと相場で決まっている。その予想が外れることがあるだろうか、いや、外れるはずがない。
 そう重い目の前を見ると、尻餅(しりもち)をつき、両手をアスファルトについて立ち上がろうとしている女子がいた。
 背中の半ばまで伸びたふわりとした茶色がかったロングヘアー、整った顔立ち、高校生としては十分に育ったいる胸、この状態だとそれしか確認することができないが、つまり、その少女は美少女だったのだ。
 そして、その美少女が立ち上がり、まだ立ち上がれずにいる僕に対し、右手を差し出してこういった。
 「私と――」

 告白キター(・∀・)

 このシチュエーションで『私と』ときたら、続く言葉は『付き合ってください』しかないだろう。
 もちろん断る理由など存在しない。むしろ喜んで『Yes』の返事をさせていただくとしよう。
 そして、美少女の口から言葉の続きが発せられる。
 「一緒に、吹奏楽やりませんか?」
 「はい、喜んで」
 僕は、その質問に即答したのだった。

       ☆

 その後、彼女と別れたところでチャイムが鳴り出した。つまり、遅刻確定である。かくして、教室に着いた直後、クラス担任の指示で職員室に急行。そこで『遅刻者カード』なるものを書かされ、学年主任らしき先生から確認印をもらうときに
早漏防止「入学式に寝坊で遅刻したやつは始めて見たぞ」
 と、25分ほど笑いものにされた挙句、教室に戻る時間がなかったので、一人だけカバンを持った状態での入学式参加という、悲惨な高校生活の幕開けとなった。
 ちなみに、遅刻した理由に関しては、乗る予定だったバスが満員で、その次のバスに乗り、ただでさえ時間が無かったのに、校門で時間をくってしまったためなのだが、遅刻理由の欄に『寝坊』と『通院』しかなかったので仕方なく寝坊につけたのだ。
 入学式は15分で終わり――というのも、本来行うべきことをほとんど省き、校長の話(すぐ終わった)と国家・校歌(歌えないケド……)斉唱しか、しなかったためだが。
 その後、初日にもかかわらず、国語・数学・英語の3教科のテストを30分づづうけ、今、部活動紹介のために再び入学式を行った体育館へ来たところだ。
 テストは、県内屈指の進学校というだけあって、難しかったが、まあ、8割は取れているだろう。 そんなことを考えているうちに、後ろから保護者が入ってくる。進路などの説明会を聞き終え、この部活動紹介は生徒と一緒に聞くということだろう。
 先ほど分けられた『部活動について』と書かれた紙に目を通す。
 この学校には、運動部・文化部あわせて40ほどの部活・同好会が存在するらしい。
 完全下校時刻は夜7時(大会前などは延長可)だそうだ。
 また、1年生は、全員何らかの部活動及び同好会に所属すること、とある。
 そこまで読んだ時点で、最初の部活動である野球部が紹介を始めた。丸刈り頭の男子がマイクを持って前に立ち、その後ろで別の2人の丸刈りの男子がキャッチボールをしている。 余談だが、この高校は野球部が強い。毎年、夏の予選ではベスト4に必ず、といっていいほど入る。そして、この県で全国優勝を果たしたことがあるのは、この高校だけらしい。なぜ僕がこんなに詳しいのかというと、今、そう紹介していたからだ。
 まあ、野球にのみ推薦枠があるので、強いのは強いのは当たり前、といえば当たり前なのだが……。ちなみに、うちのクラスにも、丸刈り頭が3人ほど、いた気がする。
 野球部が終わり、サッカー部、ラグビー部、男女バスケ・バレー部などが続いていく。
 そろえていたのかは分からないが、ここまで野球部を除いて全ての部活が、ユニフォーム、練習着などを着てファッションショーなどの形での紹介を行っている。
「次は水泳部、お願いします」
 と、司会のアナウンスが入る。
 このままの流れでいけば、スク水姿の高校生を正当な理由で拝めるのではないだろうか。
 そんな期待には反して、海パン一丁の男子が飛び出てきて、
「あ〜、ヘタこいた〜!」
 といい、床に突っ伏した。続いてBGMが流れ出し、リズムに合わせて尻を高く突き上げる。
 って、いまさら『小島よ〇お』かよ、と突っ込みを入れたくなった(というか、心の中ではすでに入れていた)。
 その後、2・3の部活が終わり、次は茶華道部だ。生け花を見せるのだろうか、などと思っていると、いきなりステージの両端から浴衣(ゆかた)姿の女子がぞろぞろと出てくる。それもかなりの人数だ。部活の内容からか、部員は女子だけのようだ。しかも、かなりの上玉ぞろい。
 何をするのだろうか、と期待を持ち始めたところで、整列が終わったようだ。
 そして――、何かのイントロが流れ出し、踊り始めた。A〇B48の『ヘビーロー〇ーション』のようだ。中には顔を赤らめ下を向きながら踊っている子がいて、見ていて顔がニヤケてきたことはひとまずおいておこう。しかし、本当に48人いるんじゃないか、と思える大人数が、一人も間違えることなく踊っている。しかも役割分担までできてるし……
 今やってるのって、茶華道部だったよね?

 そして、休憩を挟み、後半が開始された。
 生物部、地学部などから始まったのだが、
「1年間で、文化祭前の3日間しか活動がありません。3日間ですよ!?」
 と、部活が少ないことをアピールしていた。
 それでよいのか、部活動として……
 次は――、ステージ上に3人のセーラー服姿の女子がいた。それだけなら特に問題はないだろう。コスプレの衣装として代表的な服装だが、着ているのが高校生なのだから。
 しかし、この高校の女子の制服はブレザー(男子は学ラン)である。しかも、よく見ると真ん中に立っている子はショートヘアーに黄色のリボン、左手にワッペン。左側の子は、ショートヘアーにメガネ。右側の子は、ふわりとした感じのロングヘアー。 ここまできて出てくる結論は1つ。
「次は、女子テニス部です。よろしくお願いします」
 と、アナウンスが入った直後、個人的によく聴き慣れたドラムスの早打ちが鳴り出した。曲目は予想通り『ハレ〇レユカイ』。うん、やっぱりこの曲は何度聴いても、いい曲だと思う。印象的な前奏といい、馴染みやすいサビといい、何度聴いてもあきないよな。
 考えてみると、部活紹介で初めて内容を当てたな。自分の推理力の無さが少し悔しく思えてくる。
 でもよく、ハレ〇レを大勢の前(しかも公的な場)でやる気になったな。思い返してみれば、さっき写真部も『もってけ!〇ーラー服』踊ってたし。茶華道部のA〇Bを含め、この学校の常識が怪しく思えてくる。まあ、僕としては過ごしやすいことこの上ないんだが。
 そんな中、音楽系の部活のトップバッターを飾ったのは、ギター部だった。
 もう一度、『部活動について』の紙を見てみる。詳しく見ると、音楽系の部活が充実しているようだ。今紹介を行っているクラシックギター部をはじめ、弦楽部、マンドリン部、吹奏楽部――というのも、楽という文字がついているくらいだから音楽系の部活だろう――とたくさんあった。軽音部、合唱部などは無かったが。
 ギター部が終わり、マンドリン部、弦楽部と音楽系の部活が続いていく。しかし、どれもイマイチぱっとしない。ギター部は音が聞こえないし、弦楽部は音程が目茶苦茶で正直聴いていられたものではない。マンドリン部は去年全国大会へ出場しているらしいが、強弱のつき方や迫力など、あまり魅力的に感じられない。その上、マンドリン部の相対的な強さに関していえば、昨年、同市の他の高校が、全国優勝、準優勝を勝ち取っているので、全国大会出場といってもそんなに上手い方ではないのかもしれない。
 続いて、手に何かを持った生徒たちが、ステージ上に並べられた椅子の上に座っていく。よく見ると、その生徒たちの手にあるのは、トランペット、フルート、クラリネットなどの管楽器だった。
 そして、ステージの左側には、ドラムセットをはじめとする打楽器とその奏者らしき人たちが並んでいた。
 それを見てピンと来た。つまり吹奏楽とは、管・打楽のことだろう。
 オーケストラは大別すると、バイオリンなどに代表される弦楽器、トランペットに代表される管楽器、ティンパニーなどに代表される打楽器で構成される。
 だが、資金の無かったオーケストラが費用のかかる弦楽器を除いた楽器だけで演奏したのが起源だと思った。つまり、低俗な音楽だよな。
 そんなことはいいとして、吹奏楽部も弦楽部のように、管・打楽団と表記してくれればよいのに、紛らわしい。
「それでは吹奏楽同好会、お願いします」
 と、アナウンスが入った。それと同時に、ステージ脇から指揮者と思しき生徒が入場してきて、ステージの中央でこちらに向かって礼をした。そして、奏者の方へ向き直り、指揮を振り始めた。
 曲は、『上を〇いて歩こう』だろうか、メロディが聞こえてこなくてよく分からないが……。低俗な音楽らしく、個人個人が好き勝手に吹いてて、正直雑音にしか聞こえない。
 って、ちょっと待て。さっき、同好会っていってなかったか?いくらフラグのためだろうと、こんな下手で大会にも出られないような団体に入る気にはなれん。
 続いて、スクリーンがおろされ、三人の女子生徒が壇上に上がってきた。 そして、スクリーンにビデオが映し出され、それに合わせて音声が流れてくる。演奏会の様子だろうか、形や大きさのそれぞれ違うサックスを持った女子生徒四人が前に出てきて、指揮者が手を上げる、そこまで映し出されていったん映像が中断された。
「次は、吹奏楽部です。お願いします」
 そんなアナウンスが入る。
 おっと、部もあったのか。ま、部だろうか、同好会だろうが同じようなものだろう。
 そんなことを思っていると、映像が再開される。
 前言撤回……。吹奏楽に対し低俗だ、といったことも誠心誠意謝罪したい気持ちだ。
 曲目は、しっかりした題名は知らないが、テレビ番組「情〇大陸」のメインテーマだ。冒頭はサックス4重奏(カルテット)だった。4人が4人ともしっかりと自分の役割を理解し、互いに決して邪魔することなく支えあいながら音楽を紡ぎ出していく。そんな冒頭部が終わるころには会場が静まり返り、全員が曲に聴き入っていた。
 そして、聴き慣れたテンポのよい部分に入ったとき、部活についての説明が入った。その声すらも邪魔なものに思えた。
 紹介によると、吹奏楽部は、基本休みなし。活動時間については、平日は15:35〜18:45、休日は09:00〜18:45だという。この学校では比較的厳しいほうだ。そうでもしなければ、あんな素晴らしい音楽は出来ないだろう。去年の大会では、全国大会への出場を果たしているらしい。
 そして、映像が終わった。しかし、しばらくは会場の静寂が崩れることは無かった。
 数秒後、司会が思い出したかのようにあわててアナウンスを入れる。
「次は――

       ☆

――これで全ての部活の紹介が終わりました。1年生は、今週1週間を仮入部期間とし、4月12日の月曜日に本登録・活動開始となります。今日から仮入部が可能ですので、ぜひ見学していってくださいね。それでは、各自解散となります」
 という司会のアナウンスで部活紹介が終わった。
 何人かが立ち上がり、体育館を出始めたので、それに混じって体育館を出る。
 すると、後ろから
「小鳥遊君!」
 ED対策と呼び止められた。
 声の主は、今朝であった美少女、杜若(かきつばた)彩耶奈(あやな)だ。
 彼女とは同じクラスだったので、お互いの名前くらいは把握している。
 ちなみに、今朝、彼女が走って学校から飛び出した理由は、入学許可証を忘れたからだそうだ。彼女は担当の先生に断ってから出て行ったそうなので、遅刻扱いにはならなかったらしい。それにしても、入学式の日に入学許可証を忘れるなんてどんだけうっかりしてたんだよ、と思ったが、あまり人のことを言える立場ではなかったので口に出すのはやめた。
 あの時は分からなかったが、身長は僕の鼻ぐらい(僕の身長は168cmなので、そんなに高くないほうだろうか)、髪は背中の真ん中ぐらいまである柔らかなストレートで、表面の髪を集めゴムでひとつに結んでいるものが乗っかっている。やはり、胸は平均異常、腰もよい感じに強調され、制服なのでしっかりとは分からないが、くびれも相当のものだと見える。下も、規定よりもやや短めである膝上のスカートとソックスとの間の絶対領域もまたたまらない。
「この後どうするの?やっぱ、親御さんと一緒に帰る?」
 杜若がそんな質問を投げかけてきた。
「いや、親来てないし……」
 と返すと、
「ゴメン」
 と、謝罪の言葉が返ってくる。
 父は指揮者、母はソプラノ歌手として世界的に有名であり、現在、2人とも世界公演の真っ只中なので、息子の入学式になど出ていられるはずも無い。2人とも来てくれると言ってくれたのだが、仕事が仕事なので僕のほうから断った。
 そんな事情を長々と話す必要も感じられないので、
「2人とも仕事が忙しくて」
 と返しておく。すると、
「なら良かった」
 と、安堵の笑みを向けてくれる。
 その笑顔が太陽のように輝いて見えた、僕にとっては。
 すると、
「それじゃあ、どこか部活見ていくの?」
 と、再び質問が来た。
「せっかく誘ってもらったし、吹奏楽部見ていこうかな、って思ってる」
 と、返すと
「別に無理しなくていいよ、あの時はお互い急いでて流れで答えちゃっただろうし」
 と言ってくれた。
「でも行くよ、せっかくだし」
 と答える。
 確かに、あの時は愛の告白をされたと思い、内容も聞かずに即答してしまったことには違いないが、せっかく立った彼女とのフラグを捨てるわけにはいかない。それに、部活名に目を通したかんじ、小学校からある理由で1度も体育の授業に参加したことがないので体力的に厳しいうえ、運動することに魅力を感じないので、運動部は全て却下。せっかく高校生になって放課後に時間が出来たので、部活をしっかりやってみたいので、しっかり活動していない部活も却下。すると、音楽系の部活しか残らない。そして、下手な部活を除くと、吹奏楽部とマンドリン部に絞られる。マンドリン部は、男子在籍人数0人で、見方によってはハーレム天国になるのだが、ぱっと見、いまどきの女子ばかりで好みではないため、ただいづらいだけになりそうで、音楽的にもパッとしないので却下。すると、吹奏楽部しか残らなかった。
 それに、高校生であれだけ素晴らしい演奏が出来る楽団の練習にも興味があるし。
 楽器を演奏することで、ピアノのときの様にトラウマがよみがえってくる可能性がなくもないが、音楽の授業のリコーダーの演奏などはできたので、まあ大丈夫だろう。
 そんなことを思案していると、突然右手首に暖かな温もりを感じた。
「それじゃあ、行こう!」
 そんな声と同時に、杜若は僕の手首を左手でつかんだまま走り出した。
posted by 朋子 at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月30日

桜の樹

西暦1500年代

俺、ハミット=R=ブライアントの国では他国の人との結婚は法で禁じられていた

他国の人と付き合っているだけで死刑判決が出るほどだ

その時代に俺は残念なことに彼女と会ってしまった

彼女の名はリン=L=グラウカ

貴族の者でもない隣国の普通の一般市民だ

彼女とは国境の町の外れの桜の樹の下で偶然会った

一瞬子供かと思ったが近寄って話してみると歳が同じと言っていた

そこから俺と彼女は友人として付き合いだした

法はいわゆる友達以上恋人未満で抑えろとのことなので異性の親友として付き合っていた

だが、親友での関係がお互い嫌で密かに恋人として付き合っていた

まだ俺と彼女は成人である18になったら二人で他国に行き、そこで結婚しようとお互いで決めていた

俺は夏に生まれたからもう18になったが、彼女は真冬生まれだからまだ17だった

その日が来るまで俺と彼女は桜の樹の下で会っては話などをしていた




もう少しで彼女が18になろうとしたときに・・・

兵士「おい、そこの二人、何してる」

俺の国の兵士が来た

兵士「お前ら、我が国の法のことは知っているよな」

彼女を連れて逃げようと思い彼女の手を握って走ろうとしたが彼女は動こうとはしなかった

リン「はい、知っています」

兵士「お前らは恋人として付き合っているのか?」

ハミット「いや、えっと・・・・」

リン「はい」

ハミット「えっ!、リン・・・」

リン「・・・・・」

ぎゅっと手を握ってきた

兵士「・・・女の方は隣国の者だな」

リン「・・・・・」

リンは黙秘権を使った

兵士「・・・ふん、黙っているつもりか、まぁいい、少し調べたら分かることだ」

そう言って兵士は帰っていったED対策

ハミット「・・・リン」

リン「・・・ごめんね、ハミット」

彼女の「ごめんね」は今は逃げなかったことについてだと思っていた




次の日

兵士「失礼する」

いきなり兵士が俺の家に入ってきた

ハミット「・・・なんですか?」

兵士「昨日桜の樹の下でいたやつだな」

ハミット「・・・昨日の兵士か、何の用?」

兵士「お前と一緒にいた女が自主してきた」

ハミット「えっ!、何だって!?」

兵士「女はお前を庇ったつもりなのか自分だけが悪いと言ってきた」

ハミット「・・・・・」

彼女は何故自主したのか、何故自分だけが悪いと言ったのか、そんな疑問が頭の中で旋回していた

兵士「今日の正午に女の公開処刑を行う、来たければ来い、町の中央の広場で行う」

そう言い残して兵士は出て行った

ハミット「・・・・・」

昨日言った彼女のごめんねがやっと分かった

逃げなかったのもそうだが、一人で死ぬことに対してのごめんねでもあったのだろう

ハミット「・・・バカヤロウ」

もうすぐ正午になろうとしていたので俺は走って広間に向かった




ガヤガヤ、広間には人だかりが出来ていた

あそこが彼女の死刑される場所なのだろう

人だかりを掻き分けて前に進んでいった

一番前に着くと彼女が囚人服を着て手を縛られギロチン台に連れて行かれているところだった

ハミット「・・・リン!」

俺は彼女の名を叫んだ

リン「ハミット・・・」

俺に気づき、申し訳なさそうに下を向いた

彼女がギロチン台の前に着き

兵士「これより、わが国の男を誑(たぶら)かせたこの女の公開処刑を処す」

ハミット「・・・誑かせた?」

何を言っているんだ?あの兵士

ハミット「・・・まさか」

彼女が俺を無罪にするためにわざと・・・

ハミット「リン!、やめろ!お前だけ死ぬなんて!」

リン「ハミット・・・・」

兵士「この女はわが国の未成人の男を誑かし、男の気持ちを弄(もてあそ)んだ、これはわが国の兵士となりうる者を潰す行為とみた」

兵士「よって、このものは即刻処刑とすることにした」

ハミット「誑かす・・・弄ぶ・・・」

怒りが頂点に達した

ハミット「俺は、誑かされてもないし、弄ばれてもない!!」

ハミット「俺も、彼女も、お互いに好きになったから付き合ってただけだ!、だから彼女は何も悪くない!」

彼女の国では他国の者との婚約は認められている

罪は俺だけのはず・・・

兵士「そうか、ならお前も処されるがいい」

ハミット「″お前も″、か・・・」

ってことはどちらか片方だけが残るってことはないのか

ハミット「オッケー、いいだろう」

俺は処刑台に向かった

リン「ハミット!」

ダメだと彼女が言っているのを聞かず俺は彼女の横に着いた

リン「ハミット・・・」

ハミット「俺だけが残るのも、リンだけが残るのもごめんだ、だから二人とも残るか死ぬかで、どうせどちらかが死ぬんだったら二人とも死んだ方がいい、そう思っただけさ」

リン「ハミット・・・バカ」

彼女が死刑台に連れて行かれ

兵士「言い残すことはないか?」

リン「・・・一つだけ・・・」

兵士「なら、早くしろ」

リン「ハミット」

ハミット「?」

リン「また何億分の1で、また会えたら今度は必ず・・・」

途中で沈黙したが、彼女が言いたいことは言わずとも分かった

ハミット「・・・当たり前だ」

リン「よかった・・・・」

・・・ズシャッ

鈍い音も混じって彼女の頭と胴体が分かれた

ハミット「・・・・・・」

兵士「次はお前だ」

彼女の胴体がよけられた

兵士「言い残すことはあるか?」

ハミット「あぁ、あるさ」

俺は一呼吸整えて

威哥王ハミット「こんな・・・こんな方があり続けるなら、こんな国滅んでしまえ」

・・・ズシャッ、そこで俺の意識はとんだ





その処刑が行われた翌年彼女がいた国と戦争し、その国は完全敗北した

















それから月日は経ち、西暦1990年

青年「ん〜、いい天気だな〜」

大きい桜の樹、そこは俺だけの秘密の場所

・・・まぁ春だけなんだけどな

青年「仕事までまだ時間はたっぷりあるし、寝るか」

そう言いながら向かうと桜の樹の下には少女がいた

ここは俺以外誰も来たことないのに・・・

少女「?」

俺のことに気づき、俺のほうを向いた

青年「えっと・・・」

少女「あの・・・」

二人そろって若干言葉につまり

二人「はじめまして・・・じゃないですよね」
posted by 朋子 at 16:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月22日

不倫はやりすぎですか?

妻が不倫な事をしました。子供もまだ小さく、子供が熱を出した時や子供の誕生日でさえ、この夫は不倫相手といたそうです。
やりすぎだとは思いません。奥様とてそこまでしたくなかったのが本音でしょう。
なのに夫も不倫相手も応じない。唯一連絡のつく所が夫の職場だったので、そこに行って話すしかなかった。
それだけのことでしょう。威哥王

すべては夫が妻と向き合ってコトの解決をしなかった報いです。
妻は恐らく弁護士がバックについているでしょう。アドバイスどおりにしたのかもしれませんね。
不倫相手も何も会社に来なくてもという気持ちも分からなくはないですが、お相手の不誠実さから招いた結果なので、不倫という愚考が目白にさらされるハメになったのでしょう。既婚者に手を出すということはそういうことです。自業自得ですね。

会社内ではいろんな意見があると思いますよ。「女の子はまだ若いのに可哀想」という一声には、これから来るであろう彼女の退社強要等いろんな意味が含まれているのです。「何もそこまでしなくても」と思う人はコトの次第の理解が浅い人か、不倫経験者でしょう。戦々恐々とした気持ちなのかもしれませんね。

精力剤つくづく不倫なんてするもんじゃありませんね。おお、恐ろしい。

posted by 朋子 at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月19日

夕立と気象学


 夕立ちと同じように、朝に降るにわか雨のことを朝立ちと言います。朝ににわか雨が降ることが少ないので、あまり使われないだけです。夏の暑い日に暖められた空気が上に昇り積乱雲になります。積乱雲は、人が立ち上がるようにもくもくと上に伸びます。元々、夕方に風や雲や波が起き立つことを夕立と呼んでいましたが、その雲から雨が降るので、降る雨のことも「夕立」と呼ぶようになったのでしょう。

朝立ちと夕立では、同じ「立ち」を使っていても、立つものが違うので、お互いに全く関係はありません。「むくむくと起き上がること」を、日本語で「立つ」と言うので、どちらにも「立ち」と言う言葉を使っただけです。SUPER FAT BURNING

「腹が立つ」「仁王立ち」「旅立ち」「立つ」「立ち」が使われる言葉は沢山ありますが、お互いに関係があるとは限りません。ただし夕立ちというのは日中温められた地上の空気が上昇気流が発生して急に雨雲が発達し、降る雨ですので夕方にしか起こりません
朝に降るのは大気の状態が不安定な為に降る雨ですのでにわか雨か雷雨と言うのが正しいです
朝立ちは…読んで字のごとく朝起きるとあれが立っている状態をいいます。
 夕立という現象は、気象学的には驟雨、にわか雨、雷雨、集中豪雨といった現象にあたり、「夕立」という独立した現象があるわけではない。ただ、通常の驟雨などに比べて発生する時間帯などが特徴的で、一般的によく知られているため、日本では「夕立」という用語を気象学でも用いる。

現象としては、急に発達した積乱雲によりにわか雨を降らせ、雷、突風、雹などを伴うことがあるものである。

時間帯では、正午を過ぎたころから日没後数時間までに発生するものを指す。これに対して、早朝に発生するにわか雨を「朝立」と呼ぶこともあるが、夏特有の現象というわけではなく、単純に早朝に発生するにわか雨の事を指しているだけで、あまり使用されない言葉である。
 時期では、梅雨明けごろから秋雨が始まるころまでで、夏の晴れが多い時期に発生するものを指す。 異常気象により最近では、5〜6月にも夕立が見られるようになった。さらに、これまた異常気象のせいで、近年の夕立はもはや夕立などと風情のあるものではなく、ゲリラ豪雨の形を取る事が多い。ED対策

前線、特に寒冷前線通過に際しても、突発的な強雨、強風、雷などの夕立に似た現象が起きるが、この場合は季節や時間を選ばず広範囲に起こるので、夕立とは区別される。また、低気圧の周辺で発生するもの、台風の周辺で発生するものも夕立とは呼ばない。

posted by 朋子 at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月18日

食事を楽しんでみましょう

 朝食は一日のエネルギー を提供させる為に、重要な食事です。これは当たり前のことです。でも朝食に関心を持っている人は少ないです。毎日同じものを食べる事が多い朝食から、昼食と夕食のメニューとのバランスを考えてダイエットメニューを組み立てて行きましょう。 例えばフルーツは外食やお弁当が多い昼食では取り入れにくく、夕食はカロリーを抑え目にしたいので、フルーツは朝に食べるのがオススメです。ED対策
 毎日の食事内容やカロリーは、健康、そしてダイエットのためにも気をつけたいですよね。でも昼食や夕食は、外食をしたりお弁当を買ったりするから調整が難しいです。だったら、朝食に注目してはどうでしょうか?朝食は、毎日決まった時間に、同じメニューを食べることが多いはずなので、ちょっとした工夫で、栄養の見直しやカロリーダウンが可能です。朝食は自分の生活や好みで選んではいかがでしょう。ご飯に実だくさんの味噌汁、又はパンに野菜スープ、それに卵料理でも添えて。主食として手軽な玄米フレークを食べるのは良い習慣ですが、毎日玄米フレークで飽きてきたら、何かおかずをプラスすれば栄養もアップします。一つの食べ物にこだわらず、いろいろな種類の食品から栄養をとることで体の働きも良くなります。朝少し早起きして日替わりメニューで食事を楽しんでみましょう。朝食をしっかり召し上がることは、充実した1日を過ごすにはとても大切なことですね。栄養は一日に必要な量を1食でとる場合と、3食に分けてとる場合では栄養の吸収の上では大きな違いはないでしょう。ただ、食品には、それぞれ、いろいろな栄養素が含まれており、体内で効率よく働くためには、3食でまんべんなくとりたいですね。女性用媚薬
 3食きちんと食べることで間食が減るかもしれません。また、水溶性のビタミンであるビタミンCなどは、とり過ぎても過剰な分は体外に排出されます。だから、朝早く起きて、朝食をからなず食べでください。

posted by 朋子 at 13:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月17日

一人でも楽しめる旅行


 心をリセットしたくて、一人旅に出ようと思案中です。国内旅行で二泊三日くらいの予定です。一人旅経験のある方ではないですから。どこへ行ったら良いですか?予算は上限ないです。日本の原風景に出会えます。癒されますよ。三陸海岸でカモメと戯れ、ローカル線で内陸の遠野まで。自転車で一人フラッと気ままに散策。私は心のリセット時はあまり人に構われたくない方なので、遠野は過度に観光地化されておらず、良い意味で放っておかれて助かりました。私はこのような旅行に興味を持っています。超級脂肪燃焼弾
 他、金沢、出雲、秋田、神戸もお勧めです。屋久島など大自然とのふれあい系は、そこで心をリセット出来れば良いですが、帰って来た時とのギャップが大きすぎて凹む可能性も ご注意下さい。また、今はパワースポット巡礼が大流行ですが、流行しすぎ感があり、個人的には抵抗があります…手配は、まず各旅行代理店のパックを参考にされると、具体的なプランが立て易いと思います。パックでも、最近は諸々融通が利くものも多くなってきています。個人でホテル.旅館を予約される場合は、上層階、オーシャンビューなど希望があれば先に伝えるとより良いと思います。飛行機利用は、現地の飛行場から主要都市、目的地までが遠い場合があり、移動に時間を割かれることもありますのでご注意下さい。
 セックスドロップ僕は違い考えがあります。全然、掛け離れた所は、どうでしょう?!飛行機が利用出来るなら。広島県の宮島、奈良県、薬師寺とか、歴史あるものは、心が和みますよ。はたまた、兵庫県.神戸とかは、いかがですか?!昼は中華街で食べ歩き出店が多いので、お一人でも楽しめます、街も、まるごとショッピングが楽しめます、海を見ながらカフェするもよし、夜は新神戸オリエンタルホテルの隣に山の方へ行くロープウェイがあるので、上からの神戸の夜景は最高ですよ!夜景のオススメは神戸空港からもいいですよ!王子動物園のパンダもなかなか可愛い。近距離にギュッと詰まった街なので、一人旅も楽しめるかな〜?!と思いました。色々書いて見ましたが、神戸人ではありませんです。すいません。私も一人でたまに、ふらっと旅に出ます、旅はいいもんですね、リフレッシュ出来て、価値観さえかわるかもしれない、わくわくします。自分自身、心が広がる感じがします。ちょっと大袈裟ですかね!是非、いい旅をなさってくださいね!せっかくの旅計画、リラックスしてご自身にあった目的地が見つかるといいですね。
 
posted by 朋子 at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月15日

天国はどんなところですか?


最後の入院では在宅酸素療法のテストと操作の仕方のための入院だった……。それが……入院して3日目に急変した……。
仕事が終わり貴方の居る病院へ面会に行くと……。
貴方の様子が全然違ってた……。顔は浮腫み全身浮腫んでいて……見るのも痛々しかった……。
苦しいとのこと……?。

私はあなたには言わなかったけれど……もしかしたら……。
肺に水がたまり始めてるんじゃないかと思った……。

医師に話を聞くと……やはり……的中
両方の肺に水がたまってるとのこと……。

私は抜いてほしいとお願いした
次の日 抜く治療が始まった半日で両方の肺から2リットル……。
それもまだ抜けきれない……。

貴方の顔を見たとたん涙が止まらなかった……。
ごめんなさい……貴方の前では泣かないように頑張ったのに……。
この涙がどうしようもなくて……。

セックスドロップ残酷な言葉を……私の口から出た……?。
と……なぜか言葉はこれしか出なかった……貴方へのお詫びしか……。

本当に悪い妻ね……?自分で自分が嫌になった……。
貴方に申しわけなくて……私にできることはどんなことでもしてあげたいと強く思った……。

貴方の両肺に癌が転移したときに貴方は席をはずし私は医師に……。
とお願いしていた……。
医師は今の医学では無理とのこと……私は……何もできないのかと自分を責めたわ……。

今も貴方は私のそばに居るの?
私は一人では何もできないから心配でしょ?
でも心配かけてばかりのだめな妻ね……。

貴方が亡くなった時の顔を今でも鮮明に覚えています……。

おはよう!
五便宝あなた……天国はどんなところですか?

貴方の戦死されたお父様には会えましたか?
貴方の仲の良かった同級生の女性にはもう会えたかしら?

私も彼女に逢わせてくれたわね〜素敵な方だった……。
もちろん貴方と同じ年で会ったときは60歳だったかしら

私の事で後からからかわれたって言ってたわね
貴方とは16歳も違うんだものね……私は貴方にとって良い奥さんになれたのかしら?

至らない点も沢山あったでしょうね〜……。
貴方が居なくなってからは糸が切れた凧の様な私……。

寂しくて寂しくて……どうしようもなくて……ちょっとしたことでも泣いていたわ……。

子供たちはいつも温かい目で見てくれています……。

どちらが子供なのかしらね……フフッ!

時々今でもお部屋の中に貴方の存在を感じる時があるの……?。
どうしてかしら……。
不思議ね……?。

時々あなたの遺影を見つめて話しかけてる私……でも貴方は私を見ていないの……。

そう……貴方の遺影は貴方が希望してなくなる1か月前に撮ったもの……。
ごくごく最近のあなた……。

辛さがよみがえってくる……。

posted by 朋子 at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月12日

天国への扉


重厚なデザインのドアを三度ノックする。「入りたまえ」と、いつもの厳めしい声がしたが、その声色はどこか機嫌が良さそうだった。
「失礼します」
 入室して一礼すると、社長はひとつ頷いてから人の良さそうな笑みを浮かべた。
「おめでとう、鬼頭君。君にいい話が来たんだ。出世だぞ。転勤先は天国のような所だそうだ」
「天国、ですか?」
 五便宝僕は首を傾げた
。この地の底のブラック会社の系列に、なぜ天国があるんだ。
「いや?、先方からどうしてもと言うもんだからね。君、噂になってるんだよ。人柄が良くて、お客にも新人にも親切だってね。正直ウチにいてもらうのが申し訳ないぐらいの人材だと、私は思ってる。そんなわけだからね、先方たっての願いだから。転勤の手配はこちらで済ませるから、すぐに身辺整理したまえ」
 社長はにこにこと笑っている。嫌な予感がした。
「あのう、」
「私もね! 君はウチには向いてないんじゃないかって思ってたんだ。聞けば同僚ともうまくいってないそうじゃないか? オマケに、君だから言うんだが、ウチはこの不況で青息吐息だ。こんな環境じゃ仕事にも差し支えがあるだろう」
 やはりだ。そういうことか。
「辞退させていただきます」
 何っ、と、社長と秘書が顔色を変えた。
「ありがたいお話なのですが、私は先方様のような環境では働けません」
「な、何故だね? 向こうは明るいぞ! 建物も社員も、客だってだ。『幸せを提供する企業』とまで言われてるのに」
「ほら、そうじゃないですか」
「何がだ?」
「天国なんでしょう、転勤先は」
 社長の目に動揺が走った。
「い、いや…だから、天国にも等しい、快適なだな…」
「そんな職場にこの社から行けるわけがない。これは体のいい厄介払いだ!…そうじゃないですか?」
 社長は笑みを消し、恐ろしい形相を浮かべた。
「……だったらなんだね。辞退など許すはずがないだろう。いいか、君のような勤務態度では困るのだよ。周りを見てみろ、あのキビキビした厳しい態度を。慈悲なんぞ反吐が出る! ここをどこだと思っているんだ?」
 ニヤリと。社長は片頬を上げ、邪悪な笑みを浮かべた。途端、社長に仕える悪魔が僕を羽交い締めにする。
「や、やめろ! 死にたくない!」
 三便宝社長が低い笑い声を上げた。
「君は、地獄にはふさわしくない。天国で身も心も洗ってもらうがいい。まあ、清らかな部分など我々には無いのだがね」
 高笑いを背中に聞きながら、僕は目の前に出現した天国への扉に吸い込まれていった。
posted by 朋子 at 16:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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